ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)-RC(鉄筋コンクリート)橋脚の圧入鋼板を用いた曲げ補強工法-

東日本大震災の発生があり、東海地震、東南海・南海地震といった海溝型の巨大地震や、首都直下地震等の大規模地震の逼迫性が指摘されています。災害から命や暮らしを守るために住宅や公共インフラの耐震性の向上や被害軽減に大きな効果を発揮する治水対策、海岸保全対策などが急ピッチで進められています。

道路橋やライフラインとして重要な水管橋などの橋脚の耐震補強も推進されているなか、当協会は厳しい制約条件下において、施工性に優れ、大規模な掘削および土留めが不要で経済的な曲げ補強に対応した圧入鋼板を用いた橋脚の耐震補強工法「ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)」を開発しました。

特許番号:特許第4945689号、NETIS登録番号:KT-120096-A

従来の補強

従来の既設橋脚の耐震補強工法は、RC巻立て工法や鋼管巻立て工法などがあります。

これらの工法は、鋼矢板などの土留め・仮締切を設置し、締切内掘削、排水を行って作業空間を確保する必要があります。既設構造物直下の厳しい制約条件下では、鋼矢板が短尺で多くの継施工が必要となることから、施工が困難で、工期が長く、工費も高額となるなどの課題があります。

ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)従来の補強

工法概要

ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)(Pier-Refresh Method type Flexural Reinforcement)は、下図のように鋼板を巻き立て、圧入し、補強鋼板と既設橋脚の隙間でフーチングを削孔し、軸方向鉄筋をアンカー定着した後、コンクリートを充填することによって耐震性能の向上を図ります。フーチングの削孔は、既設鉄筋を切断することのないウォータジェット(WJ)工法を用います。特徴はピア-リフレ工法と同様です。

ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)工法概要

設計方法

本工法の設計は、補強鋼板を帯鉄筋とみなして、通常のRC巻立て工法の補強設計を行います。なお、横拘束筋体積比を求める際の断面積には補強鋼板のみを考慮します。なお、FORUM8「橋脚の設計Ver.14(平成24年道示対応版)」において、本工法を補強工法として選択し、補強鋼板、軸方向鉄筋を設計することが出来ます。

ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)設計方法

施工順序

ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)施工順序

研究結果

WJ工法による削孔試験

WJ工法による削孔試験
WJ工法による削孔試験

実施工を模擬した試験体を用いて、WJ工法による削孔の施工性確認試験を実施しました。
開発した削孔装置を用いることで、制約条件下で所定の長さを安全に削孔でき、既設鉄筋に干渉した場合も既設鉄筋を切断しないことが確認できました。

アンカー定着試験

アンカー定着試験
アンカー定着試験

WJ工法により削孔した孔を用いて、孔内の状態を乾燥、湿潤、水中の3種類にてアンカー定着試験を実施しました。
孔内がいずれの状態においても、アンカー筋の降伏強度以上の十分な引抜耐力を有していることが確認できました。

エポキシ樹脂の充てん試験

エポキシ樹脂の充てん試験

アンカー定着試験終了後に、試験体を切断して目視によりエポキシ樹脂の充てん状況を確認しました。
WJ工法により削孔した凹凸のある孔内表面において、孔内の状態に関わらず、密実に充てんできていることが確認できました。

正負交番載荷試験(円形断面)

正負交番載荷試験(円形断面)
正負交番載荷試験(円形断面)

補強後の耐荷力・変形性能を確認するために、1/5 モデルの橋脚模型試験体を用いて正負交番載荷試験を実施しました。
載荷点における水平力-水平変位関係より既設RC 橋脚に対して、曲げ耐力および変形性能が向上するとともに、道路橋示方書にもとづき補強設計を行った結果を満足することが確認されました。

正負交番載荷試験(矩形断面)

正負交番載荷試験(矩形断面)
正負交番載荷試験(矩形断面)

ピア-リフレ工法(曲げ補強仕様)では、補強鋼板を土中に圧入するため補強鋼板下端部にはらみ出し防止鋼材を設置することができません。そこで、はらみ出しにより変形性能が小さくなることが考えられたため、円形断面と同様に正負交番載荷試験を実施し耐荷力・変形性能の確認を行ないました。
試験の結果、道路橋示方書にもとづく補強設計の結果に対して、耐荷力・変形性能ともに満足することが確認されました。